三越 肉筆浮世絵名品展

三越と言えば明主様との御因縁も浅からぬ超〜老舗ですが、特にここ日本橋本店にはよく足をはこばれたようです。(日本橋三越はまた機会があれば。。。) 
大正3年(1914)竣工 昭和10年増改築(東京都選定歴史的建造物)



そして「肉筆浮世絵名作展」が行われた7階は、現在も各種イベントやバーゲンなどにも利用される多目的スペースとしてありますが、当時会場として使われた大ホールのあった場所は、おそらく現在の特別食堂がある辺り(写真奥)ではないかと思われます。 



毎日新聞 昭和29年4月8日 夕刊4面

初の公開「堀江物語」など
一般観衆も十分たんのうできる
あすから肉筆浮世絵名作展


国立国会図書館 所蔵
別面社告の通りあすから開かれる『肉筆浮世絵名作展』は重要美術品のびょう風六双、絵巻四点、かけ物七〇点の展覧で、まず肉筆浮世絵の名作がこれだけ集められたことはないといわれるほど、美術ファン、一般観衆を十分たんのうさせるものと期待されている。
陳列品のうちおもなものはさきほどアメリカで開かれた日本古美術展に出品されて異常な好評を得た『湯女』(重要美術品、慶長末作品、筆者不詳)を筆頭に、岩佐又兵衛『山中常磐絵巻』『堀江物語絵巻』の二絵巻や『機織図屏風』(二曲半双、慶長末作品、筆者不詳)鳥居清信『調髪美人』懐月堂度繁『遊女』宮川長春『柳下腰掛美人』細田栄之『円窓九美人』葛飾北斎『二美人』『鵜飼』『軍鶏』など。
とくに作品が非常に少いといわれる清信や北斎の名品と認められる三作、あるいは又兵衛の二絵巻は御物『小栗判官絵巻』とともに又兵衛の三絵巻と称せられ『堀江物語』は昔から名は伝えられながら一般に公開したことがないという伝説付である。また浮世絵の看板的な存在の喜多川歌麿の『美人入浴図』も出品されるが、この作品は関東大震災で焼失したと伝えられていたが突然、一昨年の『浮世絵展』に登場、観衆をアッといわせたいわく付の名品である。


去年の浮世絵展の広告に「寒泉浴図」を載せていたのは、裸の絵だからじゃなかったですね!
やはり失礼いたしました。。。でも目を引く広告になった事は確かですよね。。。


以下は新聞に載っていた出展作品!
では浮世絵展に行ったつもりになりましょ〜う。。。?





堀江物語絵巻 部分  伝岩佐又兵衛(勝以)筆
古浄瑠璃にあった物語を絵巻にしたもので、一巻十メートルを超える十二巻からなる大作です。
 今までお金持ちに秘蔵され個人的に楽しまれてきた伝説の国宝級絵画も、明主様の御購入を機に今日から一般公開です!


※伝○○=作品に署名や落款等の作者を示すものが無い場合に、推定される制作者名の最初に「伝」をつけます。署名等があっても「伝」が付く場合もあります。(かつお式)
古い美術品には署名・落款等が無い場合も多く、作者を判定するには作品の素材の鑑定、他の作品との比較+目利き、旧所有者、箱書、過去の鑑定者の保証書等の情報から総合的に判断されます。(かつお式)
 勿論明主様所有の伝岩佐又兵衛作品の場合は、何れの美術専門家からも異論の出るところではありません。





山中常盤物語絵巻 第十一巻部分 伝岩佐又兵衛筆
奥州へ下った源義経を訪ねる母・常盤御前が途中で盗賊に殺され、その仇を討つ物語。
尚、この画像中に牛若丸がいないことをお詫びします m(__)m





伊勢物語宇津の山路図(重要美術品) 岩佐又兵衛筆
在原業平(ありわらなりひら)が険しい山を登る鹿(右上)を仰ぎ見ています。





機織図屏風 部分(拡大) 作者不詳
糸つむぎ、機織、絞り染めの準備作業など、きものを作る女性たちを綺麗な衣装や草花と共に金銀彩色を用いて描いた二曲一隻の屏風です。



「初期の物で、墨絵の――」

「初期なら春信(はるのぶ)ですよ。古いのは、筆者を入れないものですよ。私は、版画は趣味がない。版画が良いというのは、画家と印刷職工の、その腕を褒めるようなものだ。版画では、絵は死んでますよ。古い良い物は、落款(らっかん)がないですよ。落款は入れなかった。浮世絵でも仏画でも、良い物は落款がないのが多い――古いのは姿が特に良いんですね。懐月堂(かいげつどう)も好きですがね。ありますがね。あれは少し、下手物染みている。品格が薄い。やっぱり、良い物は春信、春章(しゅんしょう)それから光起(みつおき)。」

「清長(きよなが)が境で――」

「清長でも、私なんか、ちょと面白くない。それから、師宜(もろのぶ)が良いです。光起ね。品格がありますよ。又兵衛ね。その中で、又兵衛が一番ですよ。--」
御垂示録 昭和27年3月10日発行


※版画でも初版の良い物のみは多数御持ちでした。特に鈴木春信は現存する肉筆が超〜〜希少なだけに、その版画も多数お持ちです。初期の錦絵にもかかわらずコンディション抜群のコレクションです!また超〜〜希少な春信の肉筆も複数点お持ちでした。


立美人図 懐月堂度繁(かいげつどうどはん)筆
懐月堂一門は皆、版画の制作をおこなわず肉筆浮世絵専門の一派でした。
 小袖にある「桐」の文字や模様は、モデルとなった遊女の源氏名を示すそうです。(資料不足の為不明)
柳下腰掛美人図 宮川長春筆
宮川長春(1683〜1753)もまた、終生浮世絵版画に筆をとらなかった異色の浮世絵師だそうです。
調髪美人図 鳥居清信筆 一幅
清信は鳥居派の初代で、江戸歌舞伎と組み芝居看板絵や番付を描いて役者絵を独占する礎を築いた人。
この人の肉筆浮世絵もかなり希少です。
 振袖には秋草に「千秋萬歳」の文字が散らされています。季節に合わせて床の間を飾り楽しまれました。





井出の玉川図 鈴木春信筆
新古今和歌集の古歌の意を江戸美人の姿をかりて描いた作品。
駒とめてなほ水飼はん山吹の 花の露そふ井出の玉川
藤原俊成(としなり)

(井出の玉川=京都府南部の小川)


当時の浮世絵版画は大量生産物として安く庶民の間でも楽しめる大衆向け芸術作品でした。一方肉筆浮世絵は一点物としてお金持ちが楽しむ高価な芸術作品でした。
版画の版元は大衆向けに売れそうな絵を、限られた予算・素材の中で描かせようとするので、地位的に低かった当時の絵師にとっては自由な創作活動などままならないという一面がありました。
 しかしもし肉筆の依頼主が目の利く教養ある大店(おおだな)の主人等であったなら、絵師は渾身の力をこめて創作に打込めた事でしょう!

そんな大店主人のもとへ、或る日大切なお客さまがやってきました。

[主人] 本日はよく御出で下さいました
[客人] いいや、なんの。。。近くに来たのでチョッと寄らせてもらいましたよ。。。
 ん?。。。ところでこちらの掛物は。。。?
[主人] はい、春信に描かせました
[客人] ほほ〜ぅ。。。そうですか。。。あの春信に。。。
 もう山吹の頃(春)になりますか。。。?

絵を見つめる客人 「。。。」
共に見つめる主人 「。。。」

[客人] さすがは春信姿も良い。。。これは取材は新古今集ですかな

嬉しそうな主人
絵を見つめる客人

[客人] 「駒とめてなほ水飼はん山吹の 花の露そふ井出の玉川」か。。。。。。山城はもう春でしょうなぁ。。。

[主人] 本日はどうか、ごゆるりと。。。


ってな具合だったでしょうかね(笑)
つまり肉筆浮世絵には、版画には無いまた別の粋や深みも込められていたりします。


駒とめてなほ水飼はん山吹の 花の露そふ井出の玉川
馬を休ませもっと水を飲ませてやりましょう 山吹が咲き乱れ花の露が零れ加わる井出の清流にて (かつお式)



以下は葛飾北斎の肉筆3作品



鵜飼図


二美人図


軍鶏図









左は東京国立博物館所蔵の見返美人(切手で有名)、右が浮世絵展に出品された見返美人。
共に菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の作品ですが、明主様所蔵のものには師宣自身の筆によると思われる古歌が添えられており、この作品に対する愛着のようなものが感じられます。


人知れず おもふ心のくるしさを 色に出でてや 知らせそめけん
新後撰和歌集

なんか。。。なんつーか。。。すご〜くイイ歌!
400年前の古歌を師宣がコラボして、700年後の我々に語りかけているようです!


円窓九美人図 部分
細田栄之(ほそだえいし)筆


芸者、武家の奥方、町娘、水茶屋の女、御殿女中、岡場所の女(非公認娼婦)、官女、女師匠、花魁(おいらん)とさまざまな階層・仕事の九美人をひとつの丸窓におさめながらも、それぞれの生き生きとした視線は相合わず交錯し主張しています。
現代的な構図にも注目です!







雪図


月図


花図


雪月花図(重要文化財) 勝川春章(かつかわしゅんしょう)筆
雪図=清少納言、月図=紫式部、花図=小野小町と、日本三代美人(顔だけじゃないよ)を時代を跳び越して江戸好みの髪型・衣装で復活させた企画物三幅対です。
季節関係なく三幅セットで楽しんだのでしょうかね。




「--日本一というのがありますよ。団琢磨という人が持っていたのでね。湯女(ゆな)といってね――これは日本一です。日本で一番良いのは湯女と彦根屏風――この二つです。彦根屏風は、屏風ですからね。戦争で疎開するとき離したんです。今度やると、新規に仕立て直さなければならない。屏風だと一段落ちますからね。そうすると、湯女ですが、これは博物館で非常に狙っている。
肉筆に贋物というのは、滅多にないですよ。ところが、版画でも、初版とその次がありますからね。」

「外人は鑑識眼が勝っているのでございましょうか」

「研究しているからね。たいてい浮世絵というと、桃山期以後ですよ。幕末までが良いんです。私が一番好きなのは、桃山ですね。兵古帯(へこおび)しめているのですね。」

御垂示録 昭和27年3月10日発行





湯女(重要文化財) 作者不詳



 あまりにも有名なこの作品は今から400年位前のもので、冒頭の又兵衛の巻物とほぼ同時期のものと考えられています。
桃山調の美しい着物(ちゃんと兵古帯)、六女の絶妙な配置、初期風俗画中の最高傑作と言われている作品です。
 しかしこの湯女(ゆな)という女性達については当時の書物「慶長見聞集」の中では。。。
 「今は町ごとに風呂あり びた拾五文二十銭づつにて入る也 湯女といいてなまめける女ども二十人三十人と並居てあかをかき髪をそそく さてまたその他に容色よく類なく 心ざま優にやさしき女房ども 湯よ茶よと云いて持来りたわむれ浮世がたりをなす こうべをめぐらし一度笑めば 百のこびをなして男の心をまよわす・・・云々」
とあります。
「湯女」とは風呂で客の体を洗い、その後は巧みに酒や食事でもてなし、最後はもぐり(幕府非公認)で売春する仕事だったそうです。
つまりこの絵は当時の下級娼婦達が街にくりだす様子を描いた作品でした。
 そうして見ると懐手したかっぷくの良い女性を中心に、苦しくも強かに生きる6人の女性の人生やキャラが垣間見られるようで鑑賞にも一層の深みをもたらします。左の女性のピンクの小袖には「沐」(あらう)の文字が文様化されており作品の意図、作者のちょっとしたユーモアも感じられます。




この他にも70点近くの肉筆浮世絵の名品が出展されました!
このような名品ばかりを惜しげもなくデパートに出張させるのも、人心浄化・美の大衆化を積極的に進める恐ろしく合理的な方法です。
 特に明主様が収集し楽しまれた美術品には霊気が入る為、一般観衆にも目に見えない非常な力が働くそうです!



はみだし

さて平成時代の有名な「湯女」って言えば。。。やっぱ「千と千尋の神隠し」(スタジオジブリH13)の千尋ちゃんですよね(んっ?)。。。いかがわしいアニメじゃないですよ(ベルリン国際映画祭グランプリ)
映画では湯屋とそこで働く人達の怪しさ、愚かさ、たくましさ、優しさ等が描かれてます。彼女も下っぱ湯女「千」として油屋(湯屋)で少女からひとつ大人に成長します。そして宮崎駿監督独特のタッチで自然と八百万(やおよろず)の神々への畏敬(いけい)が描かれています!
 その他鳥獣戯画のカエル、「油屋」の装飾(光琳のかきつばた風も1カット)、少女の心象風景などなど、結構アニメも総合芸術の域です!
 よく観ると評論家やアニメファンには解らない、我々なら解り得るメッセージも織り込まれていて、もしや宮崎さんどこぞのディープな信者さん?みたいな(笑)映画です!いや冗談です。。。
でもヒントは電車の行き先にあります。。。やれやれ、またひとつ不毛な都市伝説誕生か?!
 まあ外人に「八百万の神」の概念を少しでも理解させたとすれば、それだけでも凄いアニメ映画ですよ!
そして、風俗産業を通して現代を描こうとした2人の巨匠に脱帽したい!(かつお式)



※MOA美術館様、図版を貼りすぎました事をお詫びいたします。
いちおうページテーマは「広告」と言う事で。。。なんとか m(__)m



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